平田クリニック かわら版 No.1 (2003年9月) これから毎月みなさまに役立つ情報を提供してゆきます。今回はその第1回です。 第1回 関節リウマチについて <まとめ> 関節リウマチは関節を病変の主座とする慢性の多関節炎で、進行すると関節の破壊を呈することがあります。 時に全身にわたる症状をきたし、強力な免疫抑制療法が必要となることがあります(この場合、悪性関節リウマチと診断されます)。 治療の最終的なゴールは関節破壊を阻止すること、機能障害を阻止すること、及び疼痛を緩和することです。 関節リウマチは診断早期から積極的に抗リウマチ薬を使用することで、関節の予後が改善することが証明されています。 治療薬では従来の抗リウマチ薬やメソトレキセートに続き、レフルノミド、抗サイトカイン療法など画期的な新薬が続々開発、市販されつつあり、 これらの適正な使用により、関節リウマチの予後が劇的に改善されることが期待されています。 <診断> 1. 関節リウマチの分類基準について(表1) 関節リウマチの診断は、国際的な分類基準に基づいて診断されます。 表1. 関節リウマチの分類基準(1987年版、American College of Rheumatology)
2.関節外症状 関節リウマチは、表2のように、関節以外のさまざまな臓器に症状が出ることがあります。 唾液腺や涙腺の炎症によって眼や口が乾くシェーグレン症候群がよくみられます。 血管炎の合併による症状(悪性関節リウマチ)、薬剤の副作用による症状など、多彩です。 表2. 悪性関節リウマチ(M関節リウマチ)の改定診断基準にあげられた症状 (1989年、厚生省特定疾患系統的脈管障害調査研究班)
3.検査所見 ・リウマトイド因子(RF):関節リウマチ患者さんの約80%で陽性です。 ・CRP:関節リウマチの疾患活動性をよく反映するので、経過観察の良い指標となります。 炎症範囲の大きさに相関して高値となります。当初のCRPが高値ほど将来の関節破壊が進むため、 このような場合、積極的に治療します。 ・MMP? 3:関節滑膜細胞などで産生される蛋白分解酵素で、関節破壊に深くかかわっています。 早期関節リウマチにおいてMMP? 3が6?^12ヵ月後のX線変化と相関することや、 最初の1年間にMMP? 3を治療により抑制できた患者さんではその後の関節障害が抑制できたことから、 関節予後を予測しうるマーカーとして測定されます。 4.関節リウマチの予後 関節リウマチの予後不良因子として挙げられているのは、若年発症、リウマトイド因子高値、赤沈(CRP)亢進、 20関節を超える腫脹、関節外症状の存在です。 <生活習慣改善のために> ●負荷がかかると関節の炎症は増悪し、破壊が進むので、重いものは持たない、 立ち仕事はなるべく減らす (台所仕事などは高めのイスを用いて行うなどの工夫)、サポーターや装具を用いて関節の無駄な動きを抑制することなどに留意します。 指趾の変形の予防には適切な装具を用います。 ●生活環境を整えることが重要です。フトンはベッドにする、洋式トイレにする、水道の蛇口やドアのノブはレバー式にするなど、 関節に負担のかからない方法をとります。関節リウマチは介護保険の特定疾病に指定されており、 40歳以上で介護保険のさまざまなサービスが受けられますので、福祉用具の貸与、購入費の補助、 住宅改修の補助などの制度を積極的に利用します。 介護保険の主治医意見書は当クリニックでお書きすることができますのでご相談ください。 ●関節の拘縮を予防する関節のストレッチ(リウマチ体操)は、入浴後に各関節を5回程度行うが、炎症の強い関節には無理をしないようにします。 当クリニックでパンフレットを用意していますので、ご相談ください。 ●痛む関節は温めることにより血行が良くなり、疼痛閾値があがります。 (入浴、温泉など)当クリニックにはホットパック、マイクロ波による温熱治療器があります。 ●特にステロイドを使用中の場合、骨粗鬆症を予防するため、禁煙、アルコールの制限、カルシウムの摂取に努めます。 ●身体障害者手帳の交付を受けると、さまざまなメリットがあるのでご相談ください。 <治療> 1.非ステロイド消炎鎮痛剤(表3) 鎮痛作用がありますが、関節炎症の改善はもたらさず、抗リウマチ薬の補助薬として用います。副作用として、 時に消化性潰瘍(胃、十二指腸潰瘍)が見られるため、予防のため胃薬(制酸薬)を一緒に服用します。 抗リウマチ薬の効果が得られたら、なるべく減量・中止にもってゆきます。 表3. 関節リウマチで使用頻度の高い薬
●日本で使用可能な抗リウマチ薬
2.抗リウマチ薬(表3) 発病早期に使用するほど治療が奏功するため、関節リウマチと診断がついたら3ヶ月以内に有効性の高い抗リウマチ薬を開始します。 抗リウマチ薬は、・X線変化、・活動性関節炎、・炎症反応陽性のうちいずれかが存在する場合に使用を開始します。 3-6ヶ月内服して効果がなければ中止し、他剤へ変更します。有効であれば継続します。 抗リウマチ薬の初発時の選択 サラゾスルファピリジン、ブシラミン、注射金剤は効果が比較的高い。 これらに効果がなければ、メソトレキセート、レフルノミドの使用を検討します。 それでも無効であれば抗TNFα療法(インフリキシマブ、エタネルセプト)を含む免疫抑制薬の使用など専門的な治療が検討されます。 3.ステロイド 活動性が高い場合に使用すると明らかな鎮痛効果、CRP低下効果がみられ、少量ステロイドの内服は関節破壊抑制効果があります。 非ステロイド消炎鎮痛剤、抗リウマチ薬と併用されることが多いですが、抗リウマチ薬の効果が出てきたら、その後ゆっくり減量・中止を目指します。 ステロイドはプレドニン5mg/日相当でも骨粗鬆症のリスクがあるため、必要最小限とします。 ステロイドの関節注射は少数関節の活動性があるときに著効します。ひとつの関節には少なくとも3ヶ月以上の注射間隔をあけることが必要です。 4.手術 疼痛が強い場合、可動域が制限された場合、関節がぐらぐらと不安定になった場合に適応となります。 関節破壊が進行してからでは術後の機能回復が不良となるので、定期的にレントゲンで評価します。 関節破壊が少ない初期には 腫れた滑膜の切除術が、ある程度進行してからは人工関節置換術、関節形成術や固定術が適応となります。 手足のしびれやずれが著明な頚椎の病変は固定術(減圧術)の適応があります。 参考文献 1)Guidelines for the Management of Rheiumatoid Arthritis 2002 Update. Arthritis Rheum 46: 328-346, 2002. 2)膠原病診療ノート 三森明夫、日本医事新報社、東京、2003 3)リウマチ基本テキスト 日本リウマチ財団教育研修委員会編、東京、2002
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