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平田クリニック かわら版 No.2 (2003年10月)


第2回 インフルエンザについて

今年のインフルエンザの予防接種の時期となってきました。今年の冬にSARSの再流行が懸念されていますが、インフルエンザとSARSは似た症状を示すため、インフルエンザの予防接種はなるべく受けるようにしましょう。

「インフルエンザ予防接種の季節がやってきました。 インフルエンザワクチンには、インフルエンザの軽症化や死亡率の低下という 効果があります。高齢者に対してのみ公費補助が出ているのも、高齢者のインフルエンザによる死亡率が高いからです。
 ところが、本年は、高齢者だけではなく、すべての国民に対してインフルエンザワクチンの接種が推奨されています。SARSが同時に流行する可能性があるからです。
 インフルエンザとSARSとは、症状が似ていますので、専門家でも初診の段階で 2つを区別することはできません。ですから、SARSが日本に上陸してからは、すべてのインフルエンザ患者さんはSARS疑い例として扱われることになります。皆さんは、今年の5月、SARSに罹患していた台湾の医師が5日間西日本に滞在したというだけでも大騒ぎになったことを覚えておられることでしょう。あの頃は、SARS疑い例どころか、SARSの流行地から帰国したというだけでも誰もその人に近寄らなくなるなどの過剰反応が見られたものでした。
 では、今冬、SARSが日本に上陸した後で、高熱を伴った呼吸器症状が出現した場合、その方はどの様な扱いを受けることになるでしょう?もちろん、SARSであれば、感染の危険性がありますから誰も近づいてはなりません。しかし、インフルエンザであったとしても、SARSを恐れる人たちを大混乱に巻き込んでしまうことでしょう。そのような事態を避けるために、すべての吹田市民は必ず年内にインフルエンザ予防接種を受けるようにしましょう。」(「SARS(新型肺炎)対策としてのインフルエンザ予防接種について」(大阪府吹田市報 11月1日号 「ドクターズメモ」 三谷一裕 医師からの引用)

◆ インフルエンザの病態と診断
 ヒトのインフルエンザウイルスには,A,BおよびC型の3種類が存在しますが,臨床的にはAおよびB型が問題となります。毎年世界中で全人口の10〜20%がインフルエンザに罹患し、その結果、300〜500万人が重症となり、少なくとも25〜50万人が死亡するとされています。
 インフルエンザは,突然の高熱,全身倦怠感,食欲不振,頭痛などの全身症状の他に,咳,痰などの呼吸器症状を呈する急性呼吸器疾患です。罹患率は小児に高く,成人および高齢者では低いですが,致死率は高齢者に高いとされています。潜伏期間は約24時間で,発病1日あるいは2日目には増殖したウイルス量はピークに達します。したがって,抗インフルエンザウイルス薬は,発病2日目までに内服する必要があります。

◆ 治療について

1. 安静,臥床
 インフルエンザはあまたある風邪の中でも別格で,発熱,頭痛,筋肉痛,関節痛,倦怠,無気力といった全身症状が非常に強いウイルス感染症です。発症してから2〜4日間は消耗を防ぐために,安静・臥床が望ましいとされています。

2. 水分の補給
 全身症状が強いため食欲が落ちます。特に小児では咳による嘔吐,発熱や下痢により消耗しやすいものです。嘔吐・下痢がひどいときは,アクアライトやポカリスエットなどで水分だけでなく電解質も補う必要があります。嘔吐・下痢を伴わないときは,お茶がよいです。緑茶でも紅茶でも,少量を頻回に摂取します。お茶の成分であるカテキンがインフルエンザウイルスの増殖を抑制することがわかっています。ムギ茶にはその作用はありません。レモンティーはよいですが,ミルクティーでは抗ウイルス効果が消失します。お茶は水分の補給と抗ウイルス作用の一挙両得です。薄めのお茶でうがいを繰り返すのもよい方法です。

3.薬物療法
発病2日以内の場合には,抗インフルエンザ薬を内服します。 
1)インフルエンザA型にのみ有効なもの
  シンメトレル(3‐5日間内服)

2)インフルエンザAおよびB型に有効なもの
  リレンザ(3‐5日間吸入)
  タミフル(3‐5日間内服)

3)鎮痛・解熱薬
  アセトアミノフェン(当クリニックではカロナールという商品名で処方いたします)が安全です。5〜6時間あければ再度内服(肛門から挿入)しても大丈夫です。剤形としては散剤,錠剤,坐薬があります。アスピリンや一部の解熱鎮痛薬は使用してはならないことになっています。

4)抗菌薬 肺炎などの合併症を併発したり,慢性の呼吸器疾患がある場合には適宜,抗菌薬を内服します。
 
◆ インフルエンザの予防について
インフルエンザは、何と言っても予防に勝る治療はありません。インフルエンザは必ず毎年流行するので,シーズン前にはインフルエンザワクチンを接種しておくことが重要で、WHOも予防接種を勧めています。ワクチンを接種していても罹患することがありますが,はるかに軽症ですみます。ワクチンの有効率は一般に70〜80%であり、その年の流行株とワクチン株の一致度により50〜95%の幅があります。インフルエンザワクチンを3週間隔で2回接種した場合、接種1箇月後に被接種者の77%が有効予防水準に達するとされています。また、ワクチン接種により施設に入所中の高齢者において、インフルエンザによる死亡を80%、入院や肺炎の発生を50〜60%減少させることが報告されています。ただし、ワクチンの効果の持続は短く、1年未満です。接種後3箇月で有効予防水準が78.8%ですが、5箇月では50.8%と減少します。効果の持続は、流行ウイルスとワクチンに含まれているウイルスの抗原型が一致した時において3箇月続くことが明らかになっています。したがってワクチンは毎年受ける必要があります。
妊娠中の場合:アメリカでは、妊娠中期以降にインフルエンザシーズンを迎える場合、秋にワクチンを接種するべきとされています。妊娠中にインフルエンザにかかると、合併症や入院のリスクが高まるからです。ワクチンは生ワクチンでなく、大きな全身性の反応もめったに起こらないため、妊娠中のいずれの時期にも安全に接種できるとされています。

インフルエンザが原因で重症化、死亡する危険性が高いのは、次の場合です。
・高齢者
・免疫機能低下がある場合
・慢性の心循環器系疾患、呼吸器疾患、腎疾患、代謝性疾患がある場合

などです。これら高リスク群に含まれる方々と、医療従事者に対して、WHOはインフルエンザワクチンの毎年接種を推奨しています。(世界中で推計10億の人々が、この高リスク群に含まれるとされています)インフルエンザを予防する最も有効な方法は、毎年インフルエンザ予防接種を受けることです。WHOは最近になって、高齢者人口における予防接種率の達成目標を、2006年までに最低50%、2010年までに最低75%と設定しました。

◆ 今年のインフルエンザワクチンについて
WHOは2003年2月28日に2003-2004年のインフルエンザシーズンに用いるインフルエンザワクチン製造株の推奨構成について発表し、この結果を踏まえて厚生労働省が今年のワクチンを決定します。今年のワクチンは昨年と同じ構成になっています。
・ A/ニューカレドニア/20/99(H1N1) ウイルス
・ A/パナマ/2007/99(H3N2) ウイルス
・ B/三東/7/97 ウイルス

◆ インフルエンザワクチンの接種について
皮下に、1〜4週間の間隔をおいて1回又は2回注射します。(2回接種を行う場合の接種間隔は、免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましい。)13歳未満では2回接種が勧められています。インフルエンザを経験したことがあるか、去年ワクチンを接種した成人・高齢者では1回接種でも有効とされています。接種の時期は10月下旬から12月中旬に済ませておくことが望ましいです。
接種当日は過激な運動は避け、接種部位を清潔に保ち、局所の異常反応や体調の変化、さらに高熱、けいれん等の異常な症状を呈した場合には、速やかにご相談ください。
以下に該当する方は慎重に接種する必要がありますので、ご相談ください。
(1)心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患及び発育障害等の基礎疾患がある場合。
(2) 前回の予防接種で2日以内に発熱のみられた場合や全身性のアレルギーの症状があった場合。
(3) 過去にけいれんの既往のある場合。
(4) 過去に免疫不全の診断がなされている場合。
(5) 気管支喘息がある場合。
(6) ワクチンの成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対して、アレルギーを呈するおそれがある場合。

◆ インフルエンザワクチンの副反応について
以下に、ワクチンの副反応の記載を引用します。(インフルエンザHAワクチン、ビケンの添付文書より)
副反応(まれに:0.1%未満、ときに:0.1〜5%未満、副詞なし:5%以上又は頻度不明)

重大な副反応
1. ショック、アナフィラキシー様症状 :まれにショック、アナフィラキシー様症状(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫等)があらわれることがある。
2. 急性散在性脳脊髄炎(ADEM):まれに発熱、頭痛、けいれん、運動障害、意識障害等があらわれることがある。
3. ギラン・バレー症候群 :四肢遠位から始まる弛緩性麻痺、腱反射の減弱ないし消失等の症状があらわれることがある。
4. けいれん(熱性けいれんを含む)があらわれることがある。
5. 肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
6. 喘息発作を誘発することがある。

その他の副反応
◆ 過敏症:まれに接種直後から数日中に、発疹、蕁麻疹、紅斑、そう痒等があらわれることがある。
◆ 全身症状:発熱、悪寒、頭痛、けん怠感、嘔吐等を認めることがあるが、通常、2〜3日中に消失する。
◆ 局所症状: 発赤、腫脹、疼痛等を認めることがあるが、通常、2〜3日中に消失する。
◆ 妊婦、産婦、授乳婦等への接種:妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には接種しないことを原則とし、予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること。

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