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平田クリニック かわら版 No.6 (2004年9月)
第6回 関節リウマチの最新の治療・・・レミケード
◆ レミケードとは
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日本では2003年7月から関節リウマチに対して使用できるようになった新薬です。
海外では既に81カ国で発売され、約50万人の患者さんで使用されています。
(2004年2月現在)
レミケードはTNFαという関節の炎症を進める物質にくっつくモノクローナル抗体で、
TNFαの働きを抑えたり、TNFαを作る細胞を壊すことにより、関節の破壊を食い止めます。
その効果は現在までに発売されている治療薬のなかで最も高いとされています。
当クリニックでもレミケードによる関節リウマチの外来点滴治療を行っています。
このパンフレットをご参考に、不明の点があればお問い合わせください。
(図)で「インフリキシマブ」とはレミケードのことです。 |
◆ レミケードはどのような場合に使用するのでしょうか
メソトレキセート(リウマトレックス)などの強力な抗リウマチ薬を使用しても活動性がある(痛みの治まらない)リウマチの患者さんに使用されます。
具体的には…
⇒腫れている関節が6個以上、かつ、痛む関節も6個以上
⇒朝のこわばりが45分以上続く
⇒ 血液検査でCRP(炎症反応)が2mg/dl以上
を満たす場合に使用が検討されます。
◆ レミケードによる治療の実際
レミケードは1回あたり約2時間で点滴します。
点滴中は血圧・体温などを測り、副作用のチェックをします。
点滴終了後も念のため1−2時間はクリニック内で安静にしていただきます。
初めての点滴後は、その2週間後、6週間後に点滴し、以後は8週間ごとなります。
レミケードでの治療中はメソトレキセート(リウマトレックスⓇ)も服用を続けます。
◆ 関節リウマチに対するレミケードの効果
1.国内での臨床試験の結果 メソトレキセート(6mg/週以上)に効果不十分な患者さんに対して、メソトレキセートを使用したうえで、
1群はプラセボ(偽薬)を、もう1群はレミケード(体重1kgあたり3mg)を点滴しました。
@その結果、14週後のACR基準20%以上改善率(注)は、プラセボ群23.4%(11人/47人) レミケード併用群61.2%(30人/49人)
となり、メソトレキセートだけの場合よりレミケードを併用したほうが3倍近く有効率があがりました。
Aさらに54週後まで治療した結果、レミケード併用群53.3%(24人/45人) となり、レミケードの有効性が持続しました。
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(図)レミケードにより治療を開始する前の痛みを100として、治療後に痛みがどれくらい改善したかを調べると、効果があった患者さんでは3回の点滴後に40まで減っていました。 |
(注)ACR基準20%以上改善率・・・以下を満たした患者さんの全体に対する比率を指します
@圧痛関節数が20%以上少なくなる
A腫脹関節数が20%以上少なくなるに加えて、
B以下の5項目のうち3項目以上が20%以上改善する
a. 患者さんによる疼痛の評価
b. 患者さんによる疾患の活動性の評価
c. 医師による疾患の活動性の評価
d. 患者さんによる身体機能評価(HAQなど)
e. 炎症反応検査(CRPなど)の結果 |
2.海外で実施された臨床試験 (ATTRACT試験 Lipsky P et al. N Engl J Med 343 1594, 2000)メソトレキセートに効果不十分な患者さんに対して、メソトレキセートを使用したうえ(12.5mg/週以上)で、1群はプラセボ(偽薬)を、もう1群はレミケード(体重1kgあたり3mg)を点滴しました。
その結果、
@治療開始54週後のACR基準20%以上改善率(注)は、プラセボ群17.0%(15/88人)レミケード併用群41.9%(36/86人) となり、レミケードの併用により約3倍、有効率が上昇しました。
A関節破壊の防止効果は 治療開始54週間後までX線フィルムで関節をSharpスコアという方法で評価したところ、プラセボ群4.00ポイントの悪化レミケード併用群0.50ポイントの悪化
となり、レミケードの併用により有意に関節破壊を抑制できました。
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(図)関節リウマチの怖さは、関節が破壊され、変形し、痛みのために日常生活が制限されることです。図のようにレミケードの使用で関節破壊の進行が抑えられることが分かります。今までの薬剤にない画期的なメリットです。 |
B身体機能の改善効果は 治療開始54週間後にHAQスコアという方法で日常生活動作の改善の大きさを評価したところプラセボ群0.1ポイントの改善レミケード併用群
0.3ポイントの改善 となり、レミケードの併用により有意に身体機能に改善が見られました。
C効果が現れるまでの速さ 炎症反応(CRPという蛋白質で検査します)は点滴開始して2週間後には著明に低下し、レミケードは今までの薬にはない速効性が証明されました。私自身も発売前の自治医科大学での治験に際して、痛くて寝たきりに近かった患者さんがレミケード点滴の翌日には病棟を歩き回ることができるまでに改善したことを経験しました。
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(図)点滴後にCRPがすばやく改善することが分かります。これは今までの治療薬にない「切れ味」です。 |
◆ レミケードの安全性 @ 副作用の頻度 国内での調査では、関節リウマチ患者さん1521人のうち282人に副作用が見られ、多くは点滴中でした。点滴中の副作用は、点滴前に抗ヒスタミン薬と解熱薬を内服しておくと有意に予防できます。また、点滴のスピードをゆっくりすると改善することがあります。
A 重要な副作用
レミケードは炎症を抑えるだけでなく、体の免疫力をおとすため、治療中はやや感染症が起こりやすくなります。
重要なものとして、肺炎、敗血症、結核などがあります。発熱、咳、悪寒など、普段見られない症状がみられたら、すぐ医師に連絡を取る必要があります。
日本でレミケードで治療された1000人の患者さんを6ヶ月追跡調査したところ 肺炎
2.5%(25人) 結核
0.6%(6人) の発病率でした。結核については、レミケード使用前にツベルクリン反応やレントゲン、肺CTで検査し、以前結核にかかった可能性がある場合は抗結核薬を予防内服すると殆どの患者さんで発病を予防できます。当クリニックでも草加市立病院に依頼して、適宜胸部CT検査を施行しています。
悪性腫瘍については、3年間の長期安全性追跡調査の結果では、プラセボとレミケードで差が認められませんでした。
◆ レミケードの治療費について
レミケードは効果が高い分費用もかかります。体重が33―66kgの患者さんで3割負担の場合、1回の治療に7万円程度の支払いが必要です。ただし、高額療養費制度を申請すると、後から一部の医療費が戻ってきます。
(点滴3回目までの1ヶ月あたりの医療費の支払い上限が72300円、4回目以降は支払い上限が40200円となっていて、これを超える分は戻ってきます。
患者さんの加入している健康保険組合によっては、さらに多くが戻ってきますが、組合によって異なるので、詳しくは所属の組合にお問い合わせください)
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