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平田クリニック かわら版 No.12 (2006年11月)


第12回  気管支喘息・・・発作のない生活を目指す治療について


自分の喘息は何点でしょうか?・・・まずは、喘息コントロールテスト(ACT:グラクソ・スミスクライン社提供)であなたのいまの喘息の状態を確認してみましょう。
このテストは喘息の12歳以上の方が、自分自身の喘息の状態を点数で知るために役立ちます。
各質問について、該当する点数を丸で囲んでください。25点満点です。
丸で囲んだ点数を合計すると、あなたの喘息コントロールテストの総合点を出すことができます。

次のページに判定結果があります。

喘息コントロールテストの判定
左の判定表で 25点満点は、現在の治療で十分であることを示します。

20〜24点
も順調なコントロールであることを示します。 つまり、20〜25点であれば良好なコントロールであるといえます。

20点未満はコントロール不良です。現在の治療では不十分であり、不測の発作による夜間の救急外来受診や入院を避けるために、治療を強化する必要があります。すぐに主治医にご相談ください。


喘息は慢性の気道の炎症です
最近は吸入ステロイド薬をはじめとした有用な治療薬の登場で、喘息死は減ってきています。(それでも日本では2004年に3283人もの方が喘息で亡くなっており、未だにあなどれない病気です)。今後は発作のない快適な生活を維持することが重要な目標です。
気管支喘息は気道の慢性炎症が原因です。この炎症は、発作がおきていない時でも慢性的に持続しているのです。最近の喘息治療は、症状がない時でも吸入ステロイド薬により炎症の治療を継続する「発作を出さない」治療が全世界で行われています。高血圧の患者さんが毎日降圧薬を服用するように、中等症以上の気管支喘息の患者さんも、毎日炎症を抑えるス吸入テロイド薬(副作用は非常に少ない薬です)を中心とした薬剤治療を継続することで、発作がない、快適な生活を送ることができます。

● 治療の目標
小児の喘息では以下のような治療目標が掲げられています。
【1】スポーツも含め日常生活を普通に行うことができる
【2】昼夜を通じて症状がない
【3】β2刺激薬(発作止めの吸入薬・・サルタノール、メプチン吸入など)の頓用が必要ない
【4】学校を欠席しない
【5】肺機能がほぼ正常
【6】ピークフローメーターによる自己測定値が安定している
(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005)

この目標を達成するために積極的な炎症を抑える治療を進めてゆきます。
喘息の治療薬は、
【1】毎日規則的に使う薬(長期管理薬 コントローラー)・・・吸入ステロイド薬、長時間作用型のβ2刺激薬など
【2】発作がおきた時だけに使う薬(発作治療薬 リリーバー) ・・・サルタノールやメプチンなどの発作止めの吸入薬
の2種類があります。
発作を起こさない喘息の治療は、(1)の、長期管理薬(コントローラー)を用いた継続的な治療が最新の治療法です。

● 有用な長期管理薬の組み合わせは、入院や欠席・欠勤のリスクを減らせます
 (宮本昭正ら、アレルギー・免疫13:82―99, 2006年)
中等症以上の喘息の患者さんの場合、現在のところ一番効果が高い長期管理薬(吸入薬)の組み合わせ(吸入ステロイド薬 + 長時間作用型のβ2刺激薬)で治療することにより、入院や学校の欠席のリスクを大きく減らせることが証明されました。
併用治療開始前の6ヶ月間と比べて、ス吸入テロイド薬(フルタイド)と長時間作用型の吸入β2刺激薬(セレベント)を6ヶ月間併用することにより、対象者277名において、入院は70%減少、救急治療室受診は96.8%減少、予定外の外来受診は68.8%減少、欠勤・欠席は73.2%減少できたというすばらしい結果です。
SLM:セレベント
FP:フルタイド

左のグラフでは、救急治療室受診、予定外の病院受診、欠勤・欠席の3項目は、フルタイドとセレベントの併用により統計学的に有意に減少したことを示しています。

● 最新の喘息治療:喘息予防・管理ガイドライン2006より(日本アレルギー学会)
今年改定された日本アレルギー学会のガイドラインからの引用です。
ステップ1から4までの4段階の重症度が上がるに従い、治療を強化してゆきます。
ステップ1
では、気道の炎症を早期から抑えるため、吸入ステロイド薬、あるいはロイコトリエン受容体拮抗薬による抗炎症療法が必要とされています。
ステップ2以上
の持続型喘息では、いずれの重症度でも吸入ステロイド薬(フルタイド、キュバール、パルミコートなど)が第一選択薬で必要不可欠な薬です。十分なコントロールが得られない場合の吸入ステロイド薬への併用薬では、長時間作用型の吸入β2刺激薬(セレベントなど)が作用が最も強力ですが、その他有用な併用薬として、ロイコトリエン受容体拮抗薬(シングレア、オノンなど)やテオフィリン徐放製剤(テオドールなど)が用いられます。
ガイドラインに沿った治療を受けることにより、喘息発作から開放され、日常生活を快適に送ることができるようになります。

喘息予防・管理ガイドライン2006 一部簡略
● 重症度の判断基準

重症度   ステップ1
(軽症間欠型)
ステップ2
(軽症持続型)
ステップ3
(中等症持続型)
ステップ4
(重症持続型)
喘息
症状の特徴
頻度 週1回未満 週1回以上だが毎日ではない 毎日 毎日
強度 症状は軽度で短い 月1回以上日常生活や睡眠が妨げられる 週1回以上日常生活や睡眠が妨げられる 日常生活に制限あり
夜間症状 月に2回未満 月2回以上 週1回以上 しばしば
いずれか1つが認められれば、そのステップの重症度と判断する。


●重症度ごとの治療内容
重症度 ステップ1
(軽症間欠型)
ステップ2
(軽症持続型)
ステップ3
(中等症持続型)
ステップ4
(重症持続型)
長期管理薬

◎連用
考慮

○症状がやや強い時は下記のいずれか1剤を考慮

・吸入ステロイド薬(低用量)

・テオフィリン徐放性剤

・ロイコトリエン受容体拮抗薬

・インタール吸入

・抗アレルギー薬

◎吸入ステロイド薬連用(低用量)
◎上記で不十分な時は下記のいずれか1剤を併用

・テオフィリン徐放性剤

・ロイコトリエン受容体拮抗薬

・長時間作用性β2刺激薬(吸入/貼布/経口)

○インタール吸入・抗アレルギー薬の併用可
◎吸入ステロイド薬連用(中用量)
◎下記のいずれか1剤あるいは複数を併用

・テオフィリン徐放性剤

・ロイコトリエン受容体拮抗薬

・長時間作用性β2刺激薬(吸入/貼布/経口)

○Th2サイトカイン阻害薬(アイピーディ)の併用可
◎吸入ステロイド薬連用(高用量)
◎下記の複数を併用

・テオフィリン徐放性剤

・ロイコトリエン受容体拮抗薬

・長時間作用性β2刺激薬(吸入/貼布/経口)

○Th2サイトカイン阻害薬(アイピーディ)の併用可

◎上記全てでも管理不良なら経口ステロイド薬の追加

・発作時には短時間作用性吸入β2刺激薬(サルタノールインヘラー、メプチンエアーなど)を頓用するが、普段は短時間作用性吸入β2刺激薬の頓用が必要ない状態になるように長期管理を行う。
・発作時でも短時間作用性吸入β2刺激薬を1日3−4回必要になることが週に3回以上ある場合は、長期管理を1ランク、ステップアップする。
・ 治療のステップダウン:治療の目標が達成されたら、少なくとも3ヶ月以上の安定を確認してから治療内容を減らしても良い。以降もコントロール維持に必要な治療は続ける。


●喘息における吸入ステロイド薬の重要性について

現在最も効果的な抗炎症薬です。ステップ2以上の喘息で必須の第一選択薬です。吸入ステロイド薬は、全身への吸収が非常に少ないため、副作用は内服と比べて比較にならないほど少なくなっています。適正な使用量では小児の身長の伸びにも影響しないことがわかっています。しかし、少しでも全身への吸収を少なくするため、吸入後は必ず「うがい」をするようにします。
吸入ステロイド薬の作用機序は
【1】炎症細胞の気道内への浸潤を抑制し、かつ、炎症細胞自体の活性化を抑える
【2】気道分泌(喀痰)を抑える
【3】気道過敏性を抑制する
【4】炎症性サイトカインの産生を抑制する
などが確認されています。


●喘息発作がおきた時の家庭での対処法

発作の前兆を感じたり、ゼーゼーが出始めたら、早めに速効性の気管支拡張薬を吸入しましょう。決して苦しいのを我慢してはいけません。(治療開始のタイミングが遅いほど気管支拡張薬の効果が悪くなります!)

【1】主治医から処方されている速効性の気管支拡張薬(サルタノール、メプチンエアー、メプチンクリックヘラーなど)を吸入します。(成人は1回あたり2吸入、小児は1回あたり1吸入)

【2】効果不十分なら、1時間まで20分おきに吸入を繰り返します。(1時間に3回まで吸入できる)それ以降は1時間に1回の吸入(成人は1回あたり2吸入、小児は1回あたり1吸入)を目安にします。


●救急外来を受診する目安:家庭で上記の治療をしても、下記の症状が1つでもある場合は、経口ステロイド薬(プレドニゾロンで15−30mg)を内服のうえ、直ちに救急外来を受診します。

【1】中等度以上の喘息症状が持続する
【2】速効性の気管支拡張薬の吸入を1−2時間おきに必要とする
【3】家庭での治療で3時間以内に症状が改善しない
【4】症状が悪化していく

気管支喘息は、発作を放置すると死にいたることがある救急疾患です。ステロイド吸入薬の導入で最近は喘息死は減少しつつありますが、それでも日本では2004年に3283人もの方が喘息で死亡しています。喘息死の要因として挙げられるのは、喘息に対する認識不足、不定期な外来受診、服薬について医師の指示を守らないことです。
繰り返しになりますが、重要なことは、
【1】吸入ステロイド薬などの長期管理薬は毎日忘れずに使用しましょう
【2】
薬を自分で勝手に止めたり、減らさないようにしましょう
【3】現在の治療で発作が治まりにくい時は、早めに受診するようにしましょう
【4】
速効性の気管支拡張薬(吸入薬)は、息苦しいと思ったら早めに使用しましょう
【5】タバコは絶対にやめましょう
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