平田クリニック かわら版 No.12 (2006年11月) 第12回 気管支喘息・・・発作のない生活を目指す治療について ● 自分の喘息は何点でしょうか?・・・まずは、喘息コントロールテスト(ACT:グラクソ・スミスクライン社提供)であなたのいまの喘息の状態を確認してみましょう。
● 最新の喘息治療:喘息予防・管理ガイドライン2006より(日本アレルギー学会) 今年改定された日本アレルギー学会のガイドラインからの引用です。 ステップ1から4までの4段階の重症度が上がるに従い、治療を強化してゆきます。 ステップ1では、気道の炎症を早期から抑えるため、吸入ステロイド薬、あるいはロイコトリエン受容体拮抗薬による抗炎症療法が必要とされています。 ステップ2以上の持続型喘息では、いずれの重症度でも吸入ステロイド薬(フルタイド、キュバール、パルミコートなど)が第一選択薬で必要不可欠な薬です。十分なコントロールが得られない場合の吸入ステロイド薬への併用薬では、長時間作用型の吸入β2刺激薬(セレベントなど)が作用が最も強力ですが、その他有用な併用薬として、ロイコトリエン受容体拮抗薬(シングレア、オノンなど)やテオフィリン徐放製剤(テオドールなど)が用いられます。 ガイドラインに沿った治療を受けることにより、喘息発作から開放され、日常生活を快適に送ることができるようになります。
・発作時には短時間作用性吸入β2刺激薬(サルタノールインヘラー、メプチンエアーなど)を頓用するが、普段は短時間作用性吸入β2刺激薬の頓用が必要ない状態になるように長期管理を行う。 ・発作時でも短時間作用性吸入β2刺激薬を1日3−4回必要になることが週に3回以上ある場合は、長期管理を1ランク、ステップアップする。 ・ 治療のステップダウン:治療の目標が達成されたら、少なくとも3ヶ月以上の安定を確認してから治療内容を減らしても良い。以降もコントロール維持に必要な治療は続ける。 ●喘息における吸入ステロイド薬の重要性について 現在最も効果的な抗炎症薬です。ステップ2以上の喘息で必須の第一選択薬です。吸入ステロイド薬は、全身への吸収が非常に少ないため、副作用は内服と比べて比較にならないほど少なくなっています。適正な使用量では小児の身長の伸びにも影響しないことがわかっています。しかし、少しでも全身への吸収を少なくするため、吸入後は必ず「うがい」をするようにします。 吸入ステロイド薬の作用機序は 【1】炎症細胞の気道内への浸潤を抑制し、かつ、炎症細胞自体の活性化を抑える 【2】気道分泌(喀痰)を抑える 【3】気道過敏性を抑制する 【4】炎症性サイトカインの産生を抑制する などが確認されています。 ●喘息発作がおきた時の家庭での対処法 発作の前兆を感じたり、ゼーゼーが出始めたら、早めに速効性の気管支拡張薬を吸入しましょう。決して苦しいのを我慢してはいけません。(治療開始のタイミングが遅いほど気管支拡張薬の効果が悪くなります!) 【1】主治医から処方されている速効性の気管支拡張薬(サルタノール、メプチンエアー、メプチンクリックヘラーなど)を吸入します。(成人は1回あたり2吸入、小児は1回あたり1吸入) 【2】効果不十分なら、1時間まで20分おきに吸入を繰り返します。(1時間に3回まで吸入できる)それ以降は1時間に1回の吸入(成人は1回あたり2吸入、小児は1回あたり1吸入)を目安にします。 ●救急外来を受診する目安:家庭で上記の治療をしても、下記の症状が1つでもある場合は、経口ステロイド薬(プレドニゾロンで15−30mg)を内服のうえ、直ちに救急外来を受診します。 【1】中等度以上の喘息症状が持続する 【2】速効性の気管支拡張薬の吸入を1−2時間おきに必要とする 【3】家庭での治療で3時間以内に症状が改善しない 【4】症状が悪化していく 気管支喘息は、発作を放置すると死にいたることがある救急疾患です。ステロイド吸入薬の導入で最近は喘息死は減少しつつありますが、それでも日本では2004年に3283人もの方が喘息で死亡しています。喘息死の要因として挙げられるのは、喘息に対する認識不足、不定期な外来受診、服薬について医師の指示を守らないことです。 繰り返しになりますが、重要なことは、 【1】吸入ステロイド薬などの長期管理薬は毎日忘れずに使用しましょう 【2】薬を自分で勝手に止めたり、減らさないようにしましょう 【3】現在の治療で発作が治まりにくい時は、早めに受診するようにしましょう 【4】速効性の気管支拡張薬(吸入薬)は、息苦しいと思ったら早めに使用しましょう 【5】タバコは絶対にやめましょう
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