【1】子宮頸がんについて
子宮頸がんは子宮頸部(子宮の入り口)にできるがんで、若い世代に多い病気です。20から30歳代で急増します。
日本では年間約15000人が発症していると報告されています(国立がんセンター)。 |
子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(以下、HPV)が原因で、このウイルスは性交渉により感染します。HPVは、現在100種類以上の型が確認されていますが、型により発がんリスクが異なり、高リスク型HPVは16、18、31、33、35,39,45,51、52,56、58,59,66の13種類が特に重要です。これらの型は、他の性器肛門がんや頭頚部がんの発生にも関与しています(女性のみならず男性も)。HPVは、1回罹患すると生涯罹患しない麻疹ウイルスなどと異なり、感染の機会があれば、繰り返し何度でも感染してしまうウイルスです。 |
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HPVはありふれたウイルスで、一般女性の80%以上が一生に一度は感染するという報告があります。しかも、HPV感染は通常一過性のもので、約90%は2年以内に自然消失します。ところが、高リスク型のHPVが持続感染を来たすと、5年から10年以上経ってから10〜15%の患者さんに子宮頸がんが発症すると報告されています(Katase K, et al, Intervirology 38(3-4) :192, 1995)。
高リスク型HPVの中でも特に16,18型が日本人子宮頸がんの約60%を占めます。このたび発売された子宮頸がんワクチン(サーバリックス)は、このHPV16,18型の感染を防ぐワクチンです。 |
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【3】子宮頸がんワクチン(サーバリックス)について |
接種対象は、10歳以上の女性です。米国がん協会(ACS)のHPVワクチンガイドラインでは、有効性のデータが不十分なため、26歳以上及び、男性へは、接種を推奨していません(2007年)。
サーバリックスは、ウイルス遺伝子を含まない蛋白質ワクチンで、免疫原性を高めるためにアジュバントが入っています。このワクチンは3回接種することにより、HPV16,18型の感染をほぼ100%防ぐことができ、この2種類のHPVによる子宮頸がんをほぼ100%予防できます(2価ワクチン)。わが国の子宮頸がんを、全体で、およそ半減させる可能性があります(神田ら、臨床とウイルス 37(3) 145, 2009)。しかし、もし2回以下の接種で中断すると、十分な予防効果が得られないため、3回の接種が必要です。
ワクチンの3回接種により、少なくとも6年にわたり感染に有効な抗体価を維持することが判っています。また、海外データに基づいたシュミレーションでは、ワクチン3回接種により、十分な抗体価が少なくとも20年間維持されることが推計されました(グラクソ・スミスクライン社の資料より)。
一方、このワクチンは、HPV16,18型以外のウイルス感染を予防する効果は十分でないため、このワクチンで全ての子宮頸がんを予防できるわけでないことに注意が必要です。また、既にHPVに感染している場合は、そのウイルスを排除することはできません。
したがって、このワクチンを接種した後も、定期的な子宮頸がん検診を受けることが必要です。
現在、世界規模で第二世代の子宮頸がんワクチンの開発が進んでおり、そのワクチンは、現在のHPV16,18(2価ワクチン)のみならず、約10種類のHPVの感染を予防する10価程度のワクチンです。このワクチンでは高リスクHPVの約90%程度を予防できると予想されています。 |