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平田クリニック かわら版 No.24 (2010年7月)

第24回 関節リウマチに対する生物学的製剤治療は、寛解により終了できる可能性があり、発症早期ほど有効です。
生物学的製剤が多くの患者さんに使用されるようになり、寛解導入を十分に行うと、高価なこれらの薬剤も終了でき得るというエビデンスが日本人リウマチ患者さんへの使用経験からもでてきました。今回は、このことに関する最近の報告をお知らせします。
また、当クリニックでの使用成績で、発症早期ほど有効性が高いこともご報告します。


1.レミケードによる十分な治療で、レミケードから55%の患者さんが離脱できました。
(Tanaka Y, et al. Ann Rheum Dis 69(7):1286-91,2010)

生物学的製剤で関節リウマチの寛解導入が成功した患者さんが、いつまでも高価な治療を続ければ、経済的な負担は大きなものとなります。 産業医大の田中教授らによるこの研究では、抗TNF療法であるレミケードで治療開始して、十分症状が改善した(DAS28スコアが3.2未満の低疾患活動性を6ヶ月以上維持できた)日本人の患者さん(102名、リウマチ罹患期間は平均5.9年)のレミケード治療を一旦終了し、その後、1年間観察し、どれ位の患者さんでレミケードを再開しなくて済むか、観察しました。
上の図のように、レミケード治療を終了して1年後で、55%(56名)の患者さんがレミケードを中止したままで低疾患活動性の状態を維持できる(レミケードを再開しないで済む)ことがわかりました。レミケードを中止できた患者さんの背景を調べてみると、関節リウマチの罹病期間が平均4.8年で、病気が再発してレミケードを再開した患者さん(罹病期間が平均7.8年)より有意に短いこともわかりました。すなわち、発病してからレミケードによる治療を早期に開始するほうが、レミケードから離脱できる可能性が高まり、医療費が安くなることがわかりました。更に、レミケードを中止のまま維持できた患者さんの群は、レントゲン所見でも関節破壊の進行が止まる割合が67%で、レミケードを再開せざるを得なかった患者さんの群(44%)より高いこともわかりました。

それでは、どのような患者さんがレミケードを再開しなくて済むのでしょうか?
上の図が示すように、レミケード治療終了時(観察開始時)のDAS28スコアが2.225未満の「十分に深い寛解の状態」であった患者さんの群が、有意にレミケード治療を再開しなくて済む割合が高いことがわかりました。
すなわち、徹底的に病気を封じ込めたあとにレミケードを中止するのが良いことがわかりました。



2.アクテムラによる十分な治療で、アクテムラから13%の患者さんが離脱できました
(DREAM試験 2010年日本リウマチ学会講演 和歌山県立医大 西本教授 )
前述のレミケードと同様に、抗IL-6療法であるアクテムラで治療を開始して、十分症状が改善した(DAS28スコアが3.2未満の低疾患活動性を維持できた)日本人の患者さん(187名、リウマチ罹患期間は平均8.7年)のアクテムラ治療を一旦終了し、その後、1年間観察し、どれ位の患者さんでアクテムラを再開しなくて済むかを調べた結果が、今年の日本リウマチ学会で西本教授により発表されました。
結果は、下の図のように、全体で13.4%(24名)の患者さんが54週後にもアクテムラを中止したままで低疾患活動性を維持できることがわかりました。アクテムラも高価な薬ですが、患者さんによっては離脱することが可能であることが明らかにされました。
それでは、どのような患者さんが、アクテムラから離脱しやすいのでしょうか?
下のグラフは、アクテムラ治療終了時の関節炎活動性マーカー(蛋白分解酵素)である血清MMP-3(マトリックス・メタロプロテナーゼ - 3)が正常か異常高値かにより、1年後のアクテムラの使用状況を見たものです。
上のグラフのように血清MMP-3値が正常な患者さんでは、1年後に20.3%もの患者さんがアクテムラを使用しないで済んでいます。逆に、MMP-3値が異常高値のままでアクテムラを中止しても、97%の患者さんがアクテムラを再開せざるを得なくなりました。
このように、アクテムラによる十分な治療により血清MMP-3値を正常化させてからアクテムラを中止すると効果を維持できる可能性が高くなることが分かりました。



3.生物学的製剤は、早期の患者さんほど効果が高い(当クリニックでの使用経験から)

前に述べられているように、生物学的製剤は早期の患者さんの方が寛解・離脱しやすいのですが、治療の効果も早期の患者さんのほうが良いことがわかっており、当クリニックの患者さんでも同様の結果が得られています。以下に、3つの生物学的製剤についてご説明します。
【1】エンブレル
下の図は、当クリニックでエンブレルによる治療を行っている26名の患者さんを、早期(発症2年以内)と非早期(発症3年以上)とに分けて、治療効果をみたものです。
図で縦軸のDAS28(CRP)が2.3未満であれば寛解であることを示します。
図の横軸は時間経過を示し、治療前(vor)から48ヶ月後まで追跡しています。
早期の患者さんでは、非早期の患者さんよりも治療開始3ヶ月後から継続的にDAS28の数値が小さく(効果が高いことを表します)、12ヵ月後では有意な差がみられました。
エンブレルの場合、早期リウマチでは75%(6名)もの患者さんが、DAS28<2.3の寛解を達成していましたが、
非早期リウマチでは44%(8名)の患者さんしか寛解を達成していません。
【2】レミケード
上の図は、同様に当クリニックでレミケードによる治療を行っている10名の患者さんを早期と非早期に分けて36ヶ月間、効果を追跡した結果です。
エンブレルと同様、治療開始3ヵ月後から、早期の患者さんのほうがDAS28スコアは小さく、治療効果が高い傾向を認めました。 レミケードの場合も、早期リウマチでは75%(3名)もの患者さんが、DAS28<2.3の寛解を達成していましたが、非早期リウマチでは33%(2名)の患者さんしか寛解を達成していません。
【3】アクテムラ
上の図は、当クリニックでアクテムラによる治療を行っている10名の患者さんを早期と非早期に分けて24ヶ月間、効果を追跡した結果です。
治療開始3ヵ月後で早期の患者さんのほうがDAS28スコアは有意に小さく、治療効果が高い結果で6ヵ月後も同様の傾向でした。なお、早期の患者さんは治療がまだ12ヶ月には達していないため、上の図では12ヶ月以降の棒グラフがありません。
アクテムラでも、やはり、早期リウマチでは67%(2名)もの患者さんが、DAS28<2.3の寛解を達成していましたが、非早期リウマチでは14.2%(1名)の患者さんしか寛解を達成していません。
当クリニックでの使用経験からも、発症してから早期の関節リウマチほど生物学的製剤の効果が高く、臨床的寛解に到達しやすい、すなわち痛みが少なく、健常人と同様の日常生活を送ることができることがわかりました。
また、十分な治療で徹底的に病気を封じ込めることにより、生物学的製剤はから離脱できることも可能であることが日本人でも確かめられ、希望が持てる時代が到来しました。



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