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平田クリニック かわら版 No.26 (2011年8月)

第26回 関節リウマチの新しい寛解基準と分類基準

1.新寛解基準(アメリカリウマチ学会(ACR)・欧州リウマチ学会(EULAR))

2011年2月に、上記が発表されました。背景として、効果が非常に高い生物学的製剤が幅広く使用されるようになり、治療のゴール(目標)が以前より高いレベルに設定されるようになったことが挙げられます。 「関節リウマチの治療目標はまず臨床的寛解を達成することである」とされました。臨床的寛解の先には、関節破壊が進行しない「構造的寛解」、更に機能障害が進行しない「機能的寛解」といった、より高レベルの寛解があります。 従来は、欧州リウマチ学会が提唱した28関節の診察に基づくDAS(疾患活動性スコア)による寛解基準が使用されてきました。このスコアが2.6未満であれば寛解であるとされています。(DAS28<2.6) しかし、DAS28<2.6であっても、特に腫脹関節が残存している場合は、関節破壊の進行を完全には止められないことが分かってきました。すなわち、DAS28による寛解基準は「甘い」ため、関節破壊の進行を止めるために有効な、新しい寛解基準が必要とされてきました。 その結果、下の図のような臨床的寛解基準が発表されました。(評価する関節は、従来のDASで評価する28関節) 新基準では、寛解の評価は下の表にあるBoolean法あるいはSDAIのどちらでも良い、ということになりました。
ACR / EULARによる新しい寛解基準
Boolean法による寛解基準 以下の4項目が全て1以下
* 腫脹関節
* 圧痛関節
* 患者さんによるVAS(ビジュアル アナログ スケール:単位はcm)
* CRP値
疾患活動性指標を用いた寛解基準 SDAIが3.3以下*
* SDAI=腫脹関節数+圧痛関節数+患者さんによるVAS+医師によるVAS(cm)+CRP(mg/dl)

今後は、臨床試験などで薬剤の効果を見るには、この基準を達成しているかが国際的に求められることになります。表を見て分かるように、例えばBoolean法では、腫脹関節も圧痛関節も、いずれも1個以下でなくてはならない、というのは、従来の寛解基準に比較して非常に厳しいものです。実際に、DAS28<2.6を満たした患者さんが、SDAIが3.3以下を満たすのは26%、Boolean法での基準を満たすのは22%しか存在しない、と報告されました(Felson DT. Et al: Ann Rheum Dis 2011; 70:404)。
しかし、努力して治療を行うことによりこの厳しい臨床的寛解基準を満たすことができれば、その先にある「構造的寛解」や「機能的寛解」を達成することが可能になるのです。

この基準を当クリニックに通院され、生物学的製剤で治療を行っている患者さんに対して検討したのが下の表です。(当院ではDAS28はCRPを用いて評価しているため、DAS28の寛解は2.3以下としています(東京女子医科大学 山中教授 による方法


当クリニックでの生物学的製剤使用中の患者さんにおける各種寛解率
  DAS28 ≦ 2.3
(寛解)
DAS28 ≦ 2.7
(低疾患活動性)
Boolean法での寛解評価
(新寛解基準)
アクテムラ 41.7%
(5 / 12人)
66.7%
(8 / 12人)
0%
(0 / 12人)
エンブレル 43.8%
(14 / 32人)
59.4%
(19 / 32人)
25.0%
(8 / 32人)
レミケード 35.3%
(6 / 17人)
41.2%
(7 / 17人)
5.9%
(3 / 17人)

表の一番右の列がBoolean法での寛解率です。寛解率は、エンブレルでは25%(DAS28寛解患者さんの57%)、レミケードでは5.9%(DAS28寛解患者さんの50%)、アクテムラでは0%となりました。DAS28寛解に比べて、相当厳しい結果となっています。ここで、アクテムラで寛解率が低いのは、当クリニックでアクテムラを使用している患者さん12名のうち9名が、他の生物学的製剤が無効の重症患者さんであったことが原因と考えられます。

当クリニックでのBoolean法による寛解率が低い原因として、当クリニックで生物学的製剤を使用している患者さんは、発症後長時間を経過した患者さんが多いことが挙げられます。(発病から生物学的製剤の使用まで、アクテムラで平均14.9年、エンブレルで平均8.9年、レミケードで平均5.9年)。生物学的製剤による寛解は、早期リウマチの患者さんほど良好であることは既に明らかです。今後、早期リウマチの患者さんへの生物学的製剤の使用が増えれば、寛解率の更なる向上が期待できます。

ちなみに、当クリニックでのDAS28寛解率を、現在までの国内外の各薬剤の臨床試験と比較してみます。
●アクテムラでは、海外のCHARISMA試験(2006年)でのDAS寛解率は34%(16週間の試験)で、当クリニックのDAS寛解率は41.7%でした。

●エンブレルでは、海外のTEMPO試験(2006年)でのDAS寛解率は38%(52週間の試験)で、当クリニックのDAS寛解率は43.8%でした。

●レミケードでは、国内のRECONFIRM-2試験(2008年)でのDAS寛解率は27.6%(54週間の試験)で、当クリニックのDAS寛解率は35.3%でした。

患者さんの背景がそれぞれ異なるため、一概に比較はできませんが、国内外での臨床試験と、当クリニックでのDAS寛解率には、大きな差はないと言えます。

新しい寛解基準をクリアするためには、リウマチ患者さんが、病気の早期から生物学的製剤を含む強力な治療を受けることが必要とされています。さらに、治療開始前のDAS28スコアが低いこと、身体機能スコア(HAQ)が低いこと、MTXの使用量が多いことなどが、臨床的寛解に必要な条件である(慶応大学 竹内教授)とされています。




2.関節リウマチの新しい分類基準(アメリカリウマチ学会(ACR)・欧州リウマチ学会(EULAR))
2010年に、23年ぶりにリウマチの分類基準が改定されました。これは、生物学的製剤による治療の進歩で、早期治療の重要性が示され、リウマチの早期診断に適した分類基準の必要に迫られたからです。従来の分類基準(1987年)は、発症して数年経過した、進行リウマチの患者さんの診断には適していましたが、早期の患者さんを診断する感度は高くありませんでした。この点が今回の分類基準で改善されました。すなわち、下記のような簡潔な分類基準となりました。
新しい分類基準
●1関節以上の腫脹があり、関節リウマチ以外の疾患が否定できること。更にX線検査で骨びらん等のリウマチの変化があれば、関節リウマチと診断する。

●X線検査で胃常が無い場合は、スコアを算出して6点以上(詳細は省略)であれば関節リウマチと診断する。



3.MTX(メトトレキセート)が最大16mg/週まで使用できるようになりました

本年2月、上記が厚生労働省から承認されました。従来は8mg/週までしか認められていませんでしたが、MTXは高用量ほど有効性が高まることが分かっており、海外では以前から高用量での使用が認められていました。

ついに日本でもより有効な高容量での使用が認められたことから、今後はMTXによる治療の成績が向上することが期待されています。

更に、リウマチ患者さんで予後不良因子(高活動性である、X線で骨びらんがある、日常生活の動作障害がある、リウマチ因子や抗CCP抗体が陽性である)を有する場合は、MTXを最初から第1選択薬として使用するよう推奨されました。今後は関節リウマチと診断されたらすぐにMTXで治療を開始する患者さんが多くなると予想されています。

MTXを十分量で使用して3ヶ月が経過しても効果が不十分な場合は、より効果が高い生物学的製剤の併用を検討することとなります。




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