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平田クリニック かわら版 No.31 (2013年05月)

第31回 2013年日本リウマチ学会ハイライト

今年のリウマチ学会は、4/18〜20京都で開催されました。関節リウマチに対する治療の話題を中心にお伝えいたします。

1.レミケードの治療効果は併用するMTX量に依存します(産業医大 名和田先生)

レミケードによる治療前のMTX使用量と、レミケード治療開始22週間後の治療効果につき検討した結果が報告されました。
@ MTX量が8mg/週未満 AMTX量が8mg以上12mg/週未満 BMTX量が12mg/週以上
の3グループで、レミケード治療の効果を比較すると、

1) MTX12mg/週以上のグループで、22週後のDAS28値が有意に低い結果となった(DASが低いほど治療効果が高いことを意味します)。
2) 22週後の寛解・低疾患活動性率は、いずれもMTX12mg/週以上のグループで高い結果となった。
十分量のMTXを事前に使用することで、レミケードは、より高い効果を示すことが報告されました。
これは、MTXを十分に使用することで、MTXによる治療効果に加えて、レミケードに対する中和抗体(効果を減弱させる)が出来にくくなり、レミケードの血中濃度が上がり効果も向上することと関連があるとされています。MTXは関節リウマチのアンカードラッグ(重要な基礎薬)で、これに生物学的製剤を併用することで、より大きな効果が得られます。



2.ヒュミラの治療効果も併用するMTX量に依存します(新潟県立リウマチセンター 伊藤先生)
46名の患者さんを対象に検討された報告です。@MTX非併用 AMTX8mg/週以下 BMTX8mg/週超 の3グループについて、ヒュミラ治療開始後24週まで、DAS28の値を観察しました。

1) MTX併用グループ(38名)での臨床的寛解達成率は53%でしたが、MTX非併用グループでは25%でした(下図)。
2) MTX8mg/週超のグループでは臨床的寛解達成率は71%でしたが、MTX8mg/週以下のグループでは40%でした(下図)。
ヒュミラでも、レミケード同様、基礎薬であるMTX量が多いほど臨床的効果が高いことが報告されました。このように、関節リウマチ治療に当たっては、MTXを十分量使用することが治療の基本となってきています。
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3.当院での高用量MTX単独療法による治療効果(参考)

MTXの高用量単独治療の効果について当院で検討した結果をお示しします。
調査したMTX単独療法で8mg/週超の患者さん21名 (男性:女性=8名:13名)の内訳は、
10mg:7名  12mg:11名  14mg:2名  16mg:1名 (平均11.7mg)
でした。現時点でのSDAIを下図にお示しします。結果はSDAI寛解が57%(12名)でした。
生物学的製剤
生物学的製剤
一方、当院で生物学的製剤を使用中の患者さん60名についてもSDAIを調査しましたが(上図)、SDAI寛解は50%(30名)でした。すなわち、MTXを十分量使用すると、ある患者さんのグループでは、生物学的製剤と同等の臨床効果が得られることが分かりました。MTXの強い臨床効果がお分かり頂けると思います。



4.アクテムラを最初の生物学的製剤として使用することの有用性(かねこ内科リウマチ科クリニック 金子先生)
MTXが効果不十分な患者さんに、最初のバイオ製剤としてアクテムラを使用すると、臨床効果が非常に高いことが報告されました。当院も研究の協力施設です。23名の患者さんの治療効果を1年間、前向きに検討しました。(患者さんの平均罹患年数は5.6年で、早期でない方も多く含まれます)
非早期リウマチの患者さんが多く含まれるにも拘らず、従来のDAS28寛解(炎症と症状の消失を意味する臨床的寛解)は、52週後に81%、更に、機能的寛解(HAQ寛解)(日常生活に不便をきたさない)は52週後に86%という、非常に高いレベルでの治療効果を発揮しました(下図)。アクテムラは、従来、他の生物学的製剤が効果不十分な場合に使用されることが多かったのですが、この結果から、第1選択薬として使用することの有用性が示されました。更に、様々な疾患の患者さんのQOL評価に用いられるSF—36という指標から、アクテムラは身体機能を有意に改善させることもわかりました。
バイオ製剤
バイオ製剤



5.オレンシアの効果が速効性となるためには(豊橋市民病院 平野先生)
 ・
オレンシアの関節破壊抑制効果(富山大学 松下先生)
名古屋大学関連施設のデータベースから、オレンシア治療にて速効性であった35名(グループR)と、遅効性(グループS)であった38名を比較検討しました。

速効性であった患者さんの要因として、
@オレンシアを第1番目のバイオ製剤として使用したこと(R群77.1%、S群55.3%) 
AMTXあるいはプログラフを併用していたこと(R群80%、S群50%) などが有意な因子として挙げられました。
また、オレンシアの関節破壊抑制効果については、富山大学を中心とする多施設共同研究で、1年間治療した91名の患者さんのレントゲンを検討したところ、構造的寛解(TSS変化が0.5以下)を達成した患者さんの比率が61.8%で、現在まで報告されている他の生物学的製剤と同等であったと報告されました。
 
この他にも多くの注目すべき報告がなされていました。


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